『博学な樹』

 ビルボケ(霊体)は樹に変容しつつある。つまり再生を願っている図であり、エネルギーを潜在させている。「無題」での関連からすると女性であり母である可能性を秘めた樹であると察せられる。

 博学であるという。博学であることが過去なのか進行形なのか・・・学びつつある樹という意か。
 渋いピンクの床面は女性らしさを現わしているが、床面は湾曲しており疑似地球(現世)の態である。カーテンらしき形態は平面上で立っており質的変換されたものである。ビルボケ(霊体)を被うものなのか押し退けられたものかはわからない。
 ビルボケ(霊体)自体も前を向いているのか背を向けているのかも不明である。
 ただ《眼》だけはこちらを向いているようだけれど、浮遊し半ば床面に隠れるという物理界への暴挙に出ている。
 仕切りであるべき戸(遮蔽、出入り口)は外され重力の法則下に背く有り様である。

 総てが現世で学習されるべき法則に違反している。
《博学》とは何であるのか。
 隔絶された冥界の法則を学んでいるビルボケ(霊体)である。あの世にはあの世の学習があるのかもしれない。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより