『無題』

 男女を思わせるシルエットは音符の印刷された紙状の筒と平面の紙である。男のほうは単調だが、女のほうは立体であり心が高揚しているように見え、その紙状(霊体)のものから枝葉が出ている。(蘇生への願望だろうか)。存在が男に比べ重厚である。

 この場所がどこであるかを決定づける証は無いが、少なくとも現世を否定した場所である。無音、静謐であるのに印刷された音符のせいで幽かにメロディが潜在しているかの錯覚を覚える。

 フェンスの向こう側は白(空白)であり、手前はざらっとした感触を残した平面。
 樹木が生育できる要素にかけているが、光だけは射しており、二人(?)に影がある。

 不思議に淋しい男性形と不思議に蘇生のエネルギーに満ちた女性形はマグリットの両親かもしれず、心の中に秘めた二人への思慕に大きな差異があるのは亡母への思いの強さだと思う。
『無題』、名付けられぬ秘密の精神のありようである。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより