
『ハゲタカの公園』
赤茶の波打つ地面、漆黒の山、黄緑の空・・・すべて現実離れした光景である。ここが現実であるわけがないと断定可能なほどの異空間は不気味と言うよりほかない。
ハゲタカの公園、何もかも食い尽くされてしまう恐怖の公園、公衆の存在は無い。喰われてしまう《無に帰す》ための特別なエリア。冥府(地獄・天国)の手前かもしれない。
地底から突き出しているかのパイプ、フレーム状のパイプは循環を暗示するものだろうか、否、盾にも見え、神宮などの通り道を模しているようにも見える。シンプルなのに謎を孕んだ設えを一言でいえば《恐怖》、逃げ場のない終着の景である。
ただ中心には箱に被われた一本の樹木があり、光・通風の穴が規則的に空いている。ここだけには生命が辛うじて息づいている。希望なのか拘束なのかは判別不可であるが、生息の願望、生き続けて欲しいという願いの奇跡とも思える。
荒涼とした霊界への道、(母だけは守りたい)と言うマグリットの描く密かなそして頑なな思いの具現である。
写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより