
『困難な航海』
霊界から現世を見ている。
眼球がつけられたビルボケ(幽体)は、現世を離れた後の形を失いつつある姿、仮の姿だと思う。手足のない眼差しだけの霊魂である。現世との隔たりには封鎖のための戸があるが覗き穴があけられ遂には外されている。(精神的な力の作用を空想している)
困難な航海・・・現世からこちら(霊界)に到るまでの容赦なく厳しい道のり。
雨風はこちらにも伝わっているが、細く不安定なビルボケ(幽体/精神)が倒れることはないようである。ひたすら見つめる現世の雷鳴とどろく荒波の光景。
鳩(伝書)は白い手首で押さえられており通信手段は皆無である。
霊界に逝った母への執着、恋慕。必ずや母は時空を隔てた現世を憂えているの違いない、見ていて欲しいという強い願望が描かせた作品だと思う。
写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより