『水浴の女』

 ソファに横たわり首を真直ぐに上げこちらを直視している女性。形は極めてシンプルな線描であり、彩色は黒・白・グレイ・茶etcと渋く落ち着いた色調である。

 背後には直方体の上に乗る球体がある。〈球は空間において一定点から等距離にある点の軌跡からなる立体・曲面である〉つまり永久なる平等の象徴を提示している。
 窓外の水平線(地球の重力の方向と直角な面)はさらなる永遠・普遍である自由な思考を暗示している。

 女の強い意志、母なるものへの憧憬。マグリットの秘めた思いの原点がここにあり、声明、宣誓の一枚だと確信する。

 写真は『Rene Magritte』展覧会カタログより