
『螺旋のある円盤』
7枚の不ぞろいの紙製円盤、青色の紙製円盤の上に取り付けされた厚紙のうえに固定。
要するに幾つもの螺旋を円盤の中におさめ、さらに黒い厚紙の上に放射状をイメージさせるように並べている7枚の不ぞろいの紙製円盤である。
螺旋の中心は円の中央にあり、全体回転することを予想させる作りである。半径108.2の円であれば至近距離ではどこに焦点を当てて見ればよいのかは不明であり、拡散し眼目を失ってしまう。それぞれが活きていて、回転を予測させるからである。
この作品の前で《ここ》という主(中心)を失いながら、大いなる主題に突き当たることを感知する。
見ながら観ることが叶わないという矛盾であり鑑賞者は真実を追求する手立てを失ってしまう。
デュシャンの挑戦は《自由な拡散》こそ本質だと突き付けることにあるのではないか。
写真は『DUCHAMP』TASCHENより