『エナメルを塗られたアポリネール』

 レデイ・メイド、エナメルの看板に彩色した作品、《デュシャンは無邪気な女の子が小さな濡れたハケで丈夫そうな寝台の柱を楽しそうに塗っている広告画面に、性的な暗示を見つけて楽しんだに違いない》との注釈がある。
 確かに柱は男根を暗示し濡れたハケで塗る少女には淫靡なものを感じる。つまり男女の最初の営みに関し当然男の優位を思うが、実は女性(処女)こそが優位にあり、神聖かつ主体でさえあると秘密めく主張している。

 デュシャンは概念を覆す発見にほくそ笑み、「日常は神秘に隠され歴史を紡いでいる」とつぶやいたのではないか。

 写真は『DUCHAMP』TASCHENより