
折れた腕の前にある雪かきシャベル、風袋はいかにも不具合がある。古く劣化しているというのではなくハンド・メイドの品物は新品に見える。
持ち手の過少、力学を問うまでもなくこの雪かきシャベルは使用不可である。
この雪かきシャベルの前に(折れた腕の人)を合わせている。絶望、見込みなし、目的の不履行の必至は物悲しさを漂わせる。
目的の遂行は消失し霧散する、悲劇である。作家は何を言おうとしているのだろう、作品は静かに沈黙する。
この世にあって役に立たない代物であり消去することで解決するような事案の提示は、存在理由への問いを投げかけている。
理由、目的の遂行の欠如は受け入れがたい。これら総ては《負》の烙印のもと望まれることは希薄である。負の存在は正を正当化するように見え、負の正当性は隠蔽されてしまう。
負、あるがままの存在は並べて正当性を所有すべく有るという本質を見逃してはならない。正しい視野(見解)のためにも負の優位性を確認する必要がある。
写真は『DUCHAMP』TASCHENより