トルコと言ったら、50年も前には風俗のことだったが、トルコ国に大変失礼だと今では思い出すこともないのに、トルコつながりで思い出したことがある。

 産婦人科の院内、隣のベットは二十歳の若い女性だった。
「アパートの大家さんが車で送ってくれたのよ、早朝の陣痛だったから」と言った。見舞いの若い男がやってくると彼女はこともなく「淋しいでしょ、お風呂にでも行ってらっしゃいよ」と言い、一万円札を差し出した。それを見た夫が(一万円もする風呂はない)とつぶやいた。

 産院の大部屋は入れ代わり色んな人がやってくる。ある晩、飛び切りの美人と二人だけになったことがある。いろいろ話をしているうち
「うちの旦那は、お店(飲食店)なんかで問題が起きると仲裁に入る仕事なの。喧嘩とか・・・裏の仕事ね」と。」
「・・・」
 ヤクザな仕事だったが、彼女は澄まして「うちのなかには若いのが何人かがいつもいるんだけど、時々はね!」と言い、嬉しそうに笑った。
 パチンコで捕ったカニ缶をわたしにくれた旦那、廊下の外の電話がうるさいと脅していた声は普通ではなかった。
「今度会ったらきっと、お茶しましょうね」と言った彼女、今どうしているかなと思う。

 基督系の総合病院である、その建物を見ると様々な思いが過るけど産婦人科は今はなくなったと聞いている。