
『接近する金属の中に水車のある独身者の器具』
接近する金属なんていうもの(時空)があるだろうか、金属に意思はなく移動する術を持たない。
金属の中に水車がある、金属は不動、水車は流水により回転するもの、金属の中という空洞も理解しがたい。
独身者、男女問わず伴侶を持たなければ独身者であり、特別に独身者という命名はなく、仮称である。独身者の器具など聞いたことがないが「これだ」と言われれば肯くしかないものである。
要するに得体の知れないもの、実態を想起し難い景色である。
にもかかわらず、具体化して見せる景色の作品化。一つ一つを点検、検証してみると不具合があり、平面の中の立体は奇妙に解体を余儀なくされる構成である。
確かに目に見える形象を提示しているが、明確な用途を見出せない。
《不条理》という一言で片づけられないが、不条理でしかない形態のまえで言葉を失う。
存在そのものに生産性がないという点でも無意味なのである。
しかし、曖昧模糊としたこの物の持つ寂寥は何かを訴えている。毅然とした哀歌・・・冷たく他のものを寄せ付けない厳しい詩情、理解を超えた叫びが聞こえるのである。
写真は『DUCHAMP』TASCHENより