
Ⅲ‐1‐1 自分の方へ向かう犬
木質である水面、犬は耳を立て眼差しはこちらを向いている。手前の円形状の窪みは波を暗示しているのだろうか。
水(液体)ではなく木質(固体)、犬が泳ぐことは困難というより不可である。束縛、がんじがらめの苦境であって救いは絶望的に見える。
作品(疑似現実)と現実との相違、犬は自分の方へ向かっている・・・犬の前に立つ鑑賞者は自分と重ねるが、距離が縮むことはなく永遠に向かい続けるしかない。
犬は自分にとって何だったのか。
自分自身の可能性が高い、自分を客観視しての観察である。犬は少なくとも溺れているわけではなく、耳を立てこちら(前方)を然り、見ている。
この距離、自分は犬と対峙しているが俯瞰している。自分は犬(自分)を他人事のように眺めており、犬(自分)の苛酷な状況を眺め下ろしている。
犬は自分の負っている自身の姿である。
写真は若林奮『飛葉と振動』展・図録より