
後からの試作Ⅰ
徒労・・・。
鋼鉄でできた台座の上に規定通りに穴を開けた角柱が積まれており鋼の強力な線状で固定されている。頑丈かつきちんと計算されたかの物体の集積のありようである。
しかし、全体はわずかに浮いている。相当な重量(人が持ち得ないほどの重さ)であるにもかかわらず、浮上している。このエネルギーは相当な重量をはるかに超越するほどであることは必至。(もちろん仕掛けはあるけれど、作品上の設定はそういう意図である。
無意味な作業、膨大なエネルギーの流出。生産性を持たない労働のあたかも意味ありげな物体は、過去の無意味な戦禍の遺産を象徴しているのではないか。
物体に発言・主張はないが製作意図にそれが漏れる。歴史の中の笑止、虚しい形骸を《後からの試作》で模したものである。
写真は若林奮『飛葉と振動』展・図録より