この作品に犬の姿はない、それらしき物も無いから犬と表示されなければ想像のめどもつかない。

 抽象…具体性のない対象に答は宙に浮いたままである。
 しかし、だからこそ強烈に迫るものがある。

 この重量感、この均衡(バランス)の微妙な危うさは鑑賞者を刺激する。下へ落ちるべき重り、上昇すべき泡(気泡)らしき形態。
 それぞれが意味を打ち消し、意味を彷彿とさせている。台座から立ち上がる堂々と直立した不可解な物にはエネルギーを感じざるを得ない。

 これらがなぜ『犬から出る水蒸気』なのか、生命、存在のありよう、生きるものの《重力と重力に対抗する力》に潜在的な活力を感じるのである。

 写真は若林奮『飛葉と振動』展・図録より