
「室内ー開いた扉ストランゲーゼ30番地」
扉また扉である。扉の質感はかなり重々しい。古くに設えられた家の内装、飾りもないが人影もなく、室内の空気そのものを描き出しており、まるで秘められた空間のようである。
質実剛健、決して豪奢ではない住人たちの暮らし。語らない家屋が語り始める時空(歴史)の秘密。扉の開閉は数多繰り返され行き交った歴代の家族の息づかいであり、影のようなものが潜んでいるかの重厚さがある・・・描いている画家の想い、愛着。
扉が密かに隠匿している過去の情景は古びた扉の間にもひしめいている。外から漏れる光は奥までは届かず中は眠ったままの静けさ。シンプルな扉だけの情景、扉が主体であることの物悲しさ。他を排除した孤高・孤立のありさま。
この空間に対峙する画家の想いに忙しない日常はない。まるで時間の眠りの中で安らいでいるかの様である。震撼とした空気の中に時間だけが降り積もっていく。
写真は日経 2020 9・20(ヴィルヘルム・ハマスホイ「陽光に舞う塵埃、ストランゲーゼ30番地」より)