四車線の道沿いにある田舎のガソリンスタンド、男は客を待っている。
 事務所の窓から妻らしき女が男を呼んでいるが聞こえているのかいないのか、男の反応は薄い。

 何か用事があるから呼んでいるに違いないが、男はひたすら道路を見つめている。もう長いことここ給油の客は途絶えている様子である。
 通過点、走り去る車が彼の視線を通して見える。

 線と点、流動と定点、画面の中にある線描は動かないが、その線上を通過していく数多の車を鑑賞者は無意識に感じてしまう。脳裏にはそういうデータが潜在しているからである。

 不思議に静かな画のなかに、女の強い口調と走り去っていった幾多の車、そしてこれより来るであろう車が見える、そんな想像をゆっくり喚起させる画面である。

 写真は『HOPPER』画集より