世界中どこでも見かける岬である。海に突き出た巨岩の光景を俯瞰している。
 画家はこの大地に立っている自分にことさら意識を高める。美しいというより存在の底知れぬ驚異が大地と海の挟間から押し上げてくる。

 変わらぬ光景への畏敬、億年の歴史を経由し至った現今。登場人物は皆無であり、この景色に彩や意味を加える何ものもない。日常的なドラマは介在しないが大いなる地球の片隅に立つことの震撼しうる言葉に言い表しがたい激情が胸の中に走る。

 聞こえるのは風と波の音だけ・・・この岩場、この丘(山上)こそがわたくしを支える源だと。
 眺望は画家自身である。

 写真は『HOPPER』画集より