
フォーカスは女である、着衣の下は裸身である。
何もない野原の一軒家、山頂だろうか、地平線の向こうにいきなり空が大きく開けている。女の身分証明はなくただ女であるだけの風情・・・陽の射す方を見上げている。
意味ありげだが説明はない。女に歓喜の表情はなく、少し重い気持ちが垣間見える。誰かを待つという視線でも見送る未練でもない、空を見る彼女の眼差しは物憂げである・・・悔恨だろうか。希望や活力といった前向きさが欠如している。
明るく強い陽射し、白い家、閉ざした窓、しかし、雲は秋を呼ぶ彩色である。
憂愁、今の自分、過去からの経由。明日は見えないが、つなぐ希望への片りんを匂わせるような雰囲気もある。
ただこの一瞬、是も非もなく、このひと時だけが真実である。
画家は語らず、この風情に思いを馳せている、一体化し共感しているとすら感じるのである。
写真は『HOPPER』画集より