
夜である、灯りの数から推して広い部屋の片隅にポツンと腰を掛けている女性、帽子をかぶっていることから外出先の店内で一人でいるらしい。
飲み物を飲みながら、誰かを待っているのだろうか。うつむいた顔からはため息が漏れる。
あきらめ、絶望・・・希望の色が見えないが単に疲労困憊の態であるのか。それにしては仕事とは無縁の街着の装いである。
待っている、ずっと待っている、お店が閉まるまででも待っている。この場所、この席は思い出のある席なのかもしれない。ここに座っていればいつか必ずやってくるという強い信念、秘め思惑。
笑止! 約束の時間より早く来て待っているのかもしれない。
他人の眼差し、他人の勝手な観察を喚起させる絵である。鑑賞者の心理状態によって彼女を見る眼差しが変化する心理の循環に向き合う作品は深い。むしろこちらが観察されている気分にさえなるからである。
写真は『HOPPER』画集より