
青を否定する青、「地球は青い」という時の青、生きた青の飛翔、世界の集約としての青である。
人体レリーフ、人体を模した物体、明らかに物質そのものである。
この物質そのものから非物質(精神)を喚起せよという実験的操作は画面(平面)から飛び出し、重力の法則にしたがえば落下を余儀なくされるものであるが、それを抑える人体という生命力を内在させたレリーフであることで落下をイメージさせず、むしろ人間力のような不思議なエネルギーを感じさせる。
作家はこの新しい試みで何を語ろうとしたのだろう。
物質が物質を超える、人体という誰もが周知の形態を差し出すことで真偽の壁を顕著にしたのである。物質は物質でしかなく人体レリーフに精神は宿るはずがないが、平面から突出、動き出しそうなポーズを切り取ったことで、精神性が前に押し出されている。
精神とは何か、人体には必ず宿るものであり別離しては考えられない一体である。
物質とは何か、人体その物も然りである。
人体レリーフにおける材料としての物質は、鑑賞者の脳裏に物質を超えた非物質としか呼びようのない感覚(世界)を垣間見せる、物質と精神の接線、物質の特異性である。
写真は日経 2022.10.22 より