『陽光に舞う塵埃、ストランゲーゼ30番地』

 広い世界の中のこの地、この家、この窓がわたくしである。
 フラットに描かれた画面、少し左に寄せた窓から床面に光(影)が落ちている。透けて見える塵埃は確かに舞っているはず・・・静謐な室内、空気感、時は確実に刻まれている。

 ガラス窓一枚隔てれば、にぎやかな街につながる隣の家の屋根が見える。しかし、わたくしはここで静かに世界に関わることなくじっとしている、凝固っているかのように。

 陰影は少しづつ左へ動いていく、この動き、収縮、言葉の介在しない無音の響きは胸の鼓動に共鳴し、古(いにしえ)の時をさえ伝える。この壁、この窓に対峙し時の刻みを想い満喫する至福。

 ストランゲーゼ30番地は世界の中のストランゲーゼ30番地である。

 写真は日経新聞・2020.9.29 ヴィルヘルム・ハマスホイ『陽光に舞う塵埃、ストランゲーゼ30番地』より