
『ローズ・セラヴィよ、何故くしゃみをしない?』
レディ・メイド:鳥かごに入れられた152個の角砂糖型大理石、温度計、イカの甲。
11.4×22×16㎝、小さな鳥かごであり、鳥かごというより虫かごの呈であるが、鳥かごと称している。
鳥はこの中で羽ばたけず死を待つしかない生き地獄のようなかごであるが、上部には逃げるための開口がある。とうぜん鳥はこの中に留まることは無いと思われる鳥かごである。
ローズ・セラヴィ(Rose Selavy)は「エロス、セ・ラ・ヴィ」(性愛、それが人生)という解釈(『ディシャン』解説より引用。
作品は俯瞰できる形態であり、手にとって眺めることも可能である。自由に解放されているこの問答は揺り動かすことも出来、152個の角砂糖型の大理石は軽い様相ではあるが、内実は、持ち上げると予想外の重さを知る結果になるという。
知覚と現実の差異は必ずしも一致しないが、見るものは自分の情報におけるデーターに疑いを持つことは希少である。ゆえに予想外というズレが生じるのである。
予想外は単に予想外であって見るものの認識が浅いことの証明に他ならない。ある意味これは、「あなた様の眼差しに疑いを持て」という諫言、忠告である。
写真は『DUCHAMP』TASCHENより