『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』
 油彩、ワニス、鉛箔、鉛線、埃、アルミと木と鉄の棒で固定された2枚のガラス

 277×175.8㎝の大きさである。『9つの雄の鋳型』『チョコレート粉砕機』『接近する金属の中に水車のある独身者の器具』『花嫁』などを含めた作品群がこの2枚のガラスの中に収められている。

 すべて存在するが、存在理由の欠如した無為なるもの。意味を消失した提示である。意味を剝ぎ取ったものへの愛着、執着に隠された(意味)。ことさら結集させたパワーに威力を感じる。静かなる猛威ともいうべき圧力、2枚のガラスには力を加えられた痕跡(ひび)がある。

 暴力、大いなる否定。
 否定したものをさらに否定すれば、大いなる肯定が生じるだろうか。無為、意味がないと排除されたものの憤懣、復讐、冷ややかな眼差しがある。美ではないが真であり、ありのままの裸の精神が垣間見える。タイトルの『、さえも』にエネルギーがこもっている。

 存在を打ち消されたもの。存在するが空に帰するもの、総て《有るが、無いもの》の世界である。無いという烙印に報復するもの、抗議である。

 写真は『DUCHAMP』TASCHENより