
ボトル・ラック、なかなかの勇姿、戦闘的でさえあり、バランスの取れた鉄の作品である。
製作者は役に立つ発明品という自負もあったに違いない。しかし、ボトルを再利用するには少々問題が生じる結果が生じたのではないか、見えない菌の増殖である。
販売はやがて回収の憂き目にあったかもしれない、現在ではお目にかからない代物である。(口の広い瓶、カップ・ラックなら今も活躍)
微妙に役に立たないという失望・・・用途不明。
人目にもつくほどの存在、しかし、無用の長物である。しかし無用であることさえ気づかないほどの立ち位置、人は不可解ながらも容認するという具合。
鉄という立派に強い素材、形態も鎮座するに風格さえあるバランス。しかし、究める用途に不備があり、使い勝手にすこぶる落ち度が発覚する代物。
哀愁漂う不要物の鎮座…沈思黙考、答の出ない失笑が闇に消える堂々たる『ボトル・ラック』をデュシャンはあえて、作品として鑑賞者に提示する。
写真は『DUCHAMP』TASCHENより