あひびきの夕星にして樹にかくれ
世間、人に知られないように秘密裏に逢う。夕星(金星)だって樹の影に隠れてくれている。
そうだろうか・・・。
すべては、天知る、地知る、我が知る、隠しようのない事実。
わたしが世界の中心である、逢いたい人に逢うことの至福。あなたに逢うこと以上の(世界は闇に消えてしまえ)という独りよがり。愛は身勝手、いいえ、秘かにそっと誰にも知られずに、空の夕星でさえ樹に隠れてくれている。
自責と恍惚のあいだで揺れる(あいびき)の淫ら、(夕星にして樹にかくれ)という盲目。
《あいびき》は美しい本能かもしれない。