ゆびさきに蝶ゐしことのうすれけり

 指先に蝶がいる(止まっている)ことの緊張、危うさ、総ての神経がそこに集中する。

 この緊迫感が薄れてしまったという状況。
 蝶が飛んでしまっていった、離れてしまったということは十分ありうる普通の光景である。ただこの場合、《うすれけり》という微妙な時間を入れるだろうか。

 指先にふれる、至近にいる彼女。ごく近くに感じる彼女の指先と自分の指に電気が走る。動悸がするほど神秘的なこの瞬間・・・指先がふれている(彼女の同意を得ている!)

(うすれけり)は無くなってしまったという感想が一般的である。しかしこの場合は(うすれけり)を超える、(うすれけり)を否定する状況に至ったのだと思う。濃厚な胸の高まり…彼女を抱き寄せたのではないか。
 エロスを醸す句(作品)である。