『3つの停止原基』

 原基というのは動かしがたい基準、絶対の基準である。セーブルの国際度量衛局に収められた箱入りの原基を模したものである。
 雲形定規のような、まさに雲の形のような取り留めもない形の尺である。星の数ほどもある曲線、カーブの決定打は皆無、あり得ないのである。

 絶対の反対は何だろう。不確実な任意の線を模り「停止原基」と名づく。しかも「3つの」と限定している。滑稽であり不条理である。

「停止」というのは限りがあること、そこまでという意味である。
《3・停止・原基》この三つの言葉に脈絡はない。
 この『3つの停止原基』は人が熟慮の末に決定を下した『原基』とは微塵も接点がない無謀な、無思慮な作品である。ゆえに永遠不変の解放、大いなる曖昧模糊の原点を暗示している。要するに『3つの停止原基』は逆説的に『原基』だと認めざるを得ない一打であることは間違いない。

 写真は『DUCHAMP』TASCHENより