『花嫁』

 実に不可解な絵である、『花嫁』と題している。花嫁は実態を深く問うことはない一時的な美称であり、仮称でもある。

 この絵の上下左右は断絶、切れている。起承転結の物語性を排除している。どこから始まり、どこへ向かい、どこが目的なのか全く不明である。
 にも関わらず一種の流れがあり、それらしい接続が機能しているかの如く描かれている。
 機材の連結は困難を極める構造であり連結を密かに拒む断絶もある。しかし、まったく静謐であり、破壊のイメージは微塵もない。
 個々には馴染みの形態もあるが、関連付けてみることが出来ない。不連続だからである。抽象ではない、明らかに具象めく描かれた不明な連結は意味を消失させている。
 見ること、追及を拒むのである。

 鑑賞者は作品の前で立ち尽くすしかなく、深く考え込んでしまう。
『花嫁』(タイトル)と作品の間で答えは浮遊し、否定も肯定もない沈黙が襲う。

 写真は『DUCHAMP』TASCHENより