
何とシンプルなことか、さもありなんという形態である。
『チョコレート粉砕機』とタイトルしているから当然「チョコレート粉砕機」を連想する。
材料(豆)はどこから入れ、粉砕されたチョコレートはどこへ出ていくのか。機械は効能を著しく欠如している。図(イメージ)だけを先行させ内実は空虚という図式。
怖いくらい生産不可の無用の長物、意味の剥奪。
(無目的)という虚構。
存在しているが、存在から意味を消去させている。
この絵の前で何を考えたらいいのか、美しくもなく、真でも善でもない空虚。
絵の前で呆然と立ち尽くす鑑賞者を想像したのだろうか。「チョコレート粉砕機」と題したこの絵は「チョコレート粉砕機」に近似している。
(たしかに「チョコレート粉砕機」に違いない)という感想の奥に秘められたメッセージには概念からの解放があり、無への回路…むしろ直線的な空洞を見出さざるを得ない。
写真は『DUCHAMP』TASCHENより