リアルという約束、戒律は鑑賞者の胸に深く刻まれている。否定は自身の根幹を揺るがす事件である。絶対に!という確約。鑑賞者は信じて疑わない。

 ゆえに、作品への疑惑は自身の錯視に移行する。この行き来につける決着は二次元における空間(景色)の欠落であり、単に不思議さを誘う心理的な作品ではないかという答えが浮上する。
 明らかにつながらない景色へのストレスは巧妙な隠し絵だという肯定に収まる。

 しかし、マグリットは信念を持ち、意図してこの欠落を描いた。空間が縦状に切断されるという不条理は神(真理)への冒涜である。あえて臨んだ見えぬものへの切込みを、見えるものとして描いたのだと思う。
 信じるべきものへの挑戦、《否定は肯定を露わにする》という理念が見え隠れする。

 写真は『DUCHAMP』TASCHENより