先日、映画「この世界の片隅に」を観た。

 

その日から、主題歌の「悲しくてやりきれない」が、頭の中で

何度も何度も再生されている。

 

そして、少し茫然とする。

 

ずいぶん昔に買って大切にしていた、こうの史代さんの原作漫画を

引っ張り出して、読み返す。

 

そして、またぼんやりとする。

 

主人公のすずさんが、昭和18年に広島から嫁いで行ったのは、呉市。

 

私が、7歳まで育った街。

 

映画に登場する小高い山から軍港を見下ろす風景は、私の原風景と

重なる。

 

その風景の中で、すずさんは、笑ったり泣いたり旦那さんとけんかを

したりしながら日々の暮らしを営む。

 

すずさんの幼馴染の青年が言う。

 

お前は、ほんまに普通の人じゃ。

あたりまえのことで怒って、

あたりまえのことで謝りよる。

 

すずがここの家を守るんも、

同じだけあたりまえのことじゃ。

 

そう思うてずうっと

この世界で普通で・・・

まともでおってくれ

 

すずさんの暮らしを観ていると、戦争は遠い過去の出来事ではなく、

現在の暮らしも、その延長線上にあるのだということが、胸に迫ってくる。

 

この世界で、まともに普通に暮らすことの難しさ、尊さも。

 

監督の片渕須直さんは、当時の広島の天候から雲の量まで調べて

空を描き、戦争を体験された人たちから話を聞き、今はもうない

広島や呉の街並み、そして、人々の暮らしを映画に再現させた。

 

そのディテールの繊細さは、私自身もすずさんたちとその街で

同じ空気を吸い、近所で暮らしているような錯覚を起こさせ、

空襲警報におののき、野草をどうやって料理しようかと思案させ、

家族の安否に胸を痛めたりするような体験を与えてくれる。

 

自分も一緒にその世界に生きている、と感じさせてくれる映画って、

そうそうないんじゃないかなと思う。

 

すずさんの声は、女優ののんさん。

あまちゃんの東北弁に続き、今回は広島弁。

 

違和感は、ゼロ。

 

それは、演技などを超越して、すずさんがそこに生きていると

感じさせてくれる声。

 

広島弁って、可愛いな優しいな、美しいなと思わせてくれる声。

 

のんさんの才能は、桁違いなんだと思う。

 

すずさんが実在していたら、今は92歳。

義父と同い年か。

 

誰にでもある、背負いきれない悲しみや痛み。

 

それを受け入れ、穏やかに振り返り、笑顔になれる日が来るのは、

ひとりでは無理なんだね。

 

周囲にいてくれる人が、さりげなく、少しずつ、分け合って背負って

くれていたから。

 

そんなことにも気づかされ、普通に今日のご飯をいただきながら、

誰にともなく、「ありがとう」と伝えたくなった。

 

 

 

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