我が家のレッスン室は、自宅の地下にあります。
こちらの階段を降りたところにあるのが、地下室。↓



そして、この部屋がレッスン室↓


部屋の入口には、小さな流し台があります。

この流し台。
なんせ築年数の古い家で、さらに地下なので水はけが悪く、すぐに水が溜まります。

ある日、夫が何やら流し台でゴソゴソと活動していました。
ふっといなくなっては、しばらくするとまた戻ってきて、ゴソゴソ。

あまりに長時間ゴソゴソガチャガチャが続くので、尋ねてみました。

何してるの?

いや、洗い物をしていたんだけどさ、水はけが悪いから排水溝のふたを外したら、勢いよく水が流れ出して、スプーンも一緒に流しちゃった

と苦笑い。

むき出しになった直径3センチ位のパイプの中を懐中電灯で照らすと、30センチほど下のパイプの曲がっている箇所に、スプーンが斜めに引っかかっていました。

夫の手を見ると、見慣れない工具を握っています。
どこかで仕入れてきた、細長いマジックハンドのようなもの。

パイプに落っことしたものを取るためのマジックハンド、わざわざ買ったのね

と聞くと、そうだとのこと。
夫は、しばらくガチャガチャを続行していましたが、やがて・・・

無理、無理、絶対に取れない。
パイプを解体しないと、これは取れない。
まぁ、これでも水は流れるから仕方ないでしょう。
あきらめよう!


と、言い残して、そそくさと自室に戻りました。

無理・・・?

夫が無理だというと、私の心に一気に火が付きます。

無理じゃない!絶対に取ってみせる!

翌日、夫が仕事で不在中に流し台のパイプをのぞき込むと、心細そうなスプーンがポツンと一本。

助けてください
と、めそめそと泣いているように見えます。

よし!待ってろ!今、救ってやるぜ~~!!

そう叫んで作業を開始をしたところに、15歳の娘が学校から帰ってきました。

何々、どうしたの?
え~?お父さん、絶対に無理って言ったの?
絶対に取れないって?
よし!待ってろ!絶対に取ってやる!!


親子だわ~!

夫の「絶対に無理」を聞くと、ごうごうと燃え上がる母と娘の負けん気。

娘は、家の中を探し回り、針金のハンガーを手にすると、解体しぐっと引き伸ばし、何やらガムテープで巻き付けて、静々とパイプの中に差し込みました。

ゆっくりと引き上げた針金の先には、「あ、ありがとうございます!」と泣き笑いをしているようなスプーンが、しっかりとくっついて出てきました。

え~~~~!もう救ったの?
でかした、娘!!ものの10秒もかかってないじゃん!!
お父さん、昨日何時間もやってたんだよ~~!
工具も買ってさあ~!
なんで~~!!


針金の先を見ると、小さな磁石が取り付けられていました。

わはははは!どうだ~~!!

立派な工具は必要ないの。
こちらが取りに行ってもダメなものは、向こうから来てもらえばいいんだよ。

15歳の頭、なめんなよ!!


解体したハンガーとスプーンを両手に持ち、娘の高笑いが響きます。

はあ・・・、なるほどねぇ。
磁石ですか。

取りに行っても来てくれないものは、向こうから来てもらう・・・
ははあ・・・なるほどお・・・
発想、柔軟だわ。

いやぁ~、おみそれしました。
ビジネスにも言えることですよね。

帰宅した夫は、「磁石?あぁ・・・発想すらしなかった・・・」と、大人しい反応。

娘は、不適にニヤリと笑います。

夫よ、よくお聞き。
我々50代の頭は固まってしまっているのだよ。

あれも、これもとゲーム感覚で楽しめる頭の柔軟さやゆとりが、まだまだ私たちにも必要だよね。

娘は、きっとこれからも大丈夫。
ひとりでも生きて行ける。

でも、私ら頭の固い人連盟は、お互い足りないところを補い合って生きてゆきましょう。

そう夫をなぐさめつつ、「取りに行ってもダメならば、向こうから来てもらえ」という金言を、しみじみと反すうする私でした。


心と身体をつなぐボイストレーニング*マミィズボイススタイル