「あなた歌はダメねェ・・・」
目の前に座った、今年81歳になるという女性は、唐突に言った。
私の歌を聴いた上での感想、ではない。
私の生年月日をメモし、なにやら小さな手帳をめくり、フムフムとうなずいてからの発言である。
え・・・?と、申しますと・・・
「あなたの生まれを象徴するものは、声。
だから、声に関わる仕事ってのは、とても良いの」
は、はい・・・
「でも、あなたは本命星に悪い星を持って生まれてきている。
だから、上手く行かないのよ。
どんなに頑張っても。
歌は、ダメ。
身を立てることは出来ないわ。
声が出なくなったらおしまいだしね。
歌は、声でしょ。
だから、ダメ。
今までも、これから先もダメ」
お、おぉ・・・ダ、ダメって・・・
私、27年も、歌って来ているんですが・・・
しかも、明後日、ライブもあるんですが・・・
「知らないわよ、そんなこと。
どうしても、やりたきゃやれば良いのよ。
でも、ダメなものは、ダメね」
ま、まさかのダメ出し。
しかも、連打。
何となく、これからの指針が欲しくて、知人に紹介してもらった鑑定士。
なのに私の30年近い日々、一瞬にして全否定されるの巻。
さらに、夫との相性も最悪。
合っているところがなにひとつない。
一緒に仕事をすると、共倒れ必至とのこと。
わぁ~~!共倒れ以前に、お手上げだ。
結婚して20年。
一緒に仕事をしようと、ふたりで頑張って来たんだよ。
20年。
今さら?
今さら、全部、無駄?
あの・・・
芝居とか、映画とか、演出とか、文章書くのとかは、どうでしょうかね?
「あなた、そういうこと好きなんでしょ。
だったら良いんじゃない?
芝居なら、ガラガラ声でも大丈夫だし」
えー!ちょっと待ていっ!!
なんか、違う。
なんか、違う気がするんですがっ!!
「表舞台じゃなく、少し裏方にまわれば?
あぁ、そうだ、あなた。
声の出し方とか教えるのなら、良いわよ~」
やってます。
そこは、間違ってなかったわけね。
でも、ずっとずっとこだわって来たんだよ。
歌に。
プロであるってことに。
それなのに、それなのに・・・
「14歳のお嬢さんは、あなたたちよりは、余程良いわね。
安心してて良いわよ。
でも、すでに気持ちは、あなたから離れているけどね」
と、とどめを刺しましたね。
完全に、崩壊したでござる。
その後、81歳女性の家庭円満のお話をたくさん伺いながら、私は腑抜けた声で相づちをうち、
「これからも、よろしくお願い致しま~す」
と、曖昧に笑いながらその場を辞した。
呆然自失。
「どうだった~?」
帰宅後、興味津々で尋ねる夫に、吐き出すように言った。
「ダメよ、ダメダメって言われたわよっ!」
告げられた言葉のあれこれを、一言ももらすまいとまくしたてる私に、ふんふんとうなづいて一通り聞いた夫。
「ちょっと考えてみる~」
と、さっさと自室に引っ込んでしまった。
なんだよ~、ひとりにしないでくれよ~。
ダメってなんだ?
相性ってなんだ?
う~ん、整理ができない。
翌日。
食欲のない私の前で、居住まいを正して夫は言った。
「今まで、良い夫婦になろうと頑張って来た。
一緒に仕事をして、良い結果を出そうともした。
でも、あなたとの関係を見直そうと思う。
今までのことは終わりにしよう」
呆然自失からの・・・
青天の霹靂!!
い、いったい、私に、何が起きているんだ?!!
(つづく)
目の前に座った、今年81歳になるという女性は、唐突に言った。
私の歌を聴いた上での感想、ではない。
私の生年月日をメモし、なにやら小さな手帳をめくり、フムフムとうなずいてからの発言である。
え・・・?と、申しますと・・・
「あなたの生まれを象徴するものは、声。
だから、声に関わる仕事ってのは、とても良いの」
は、はい・・・
「でも、あなたは本命星に悪い星を持って生まれてきている。
だから、上手く行かないのよ。
どんなに頑張っても。
歌は、ダメ。
身を立てることは出来ないわ。
声が出なくなったらおしまいだしね。
歌は、声でしょ。
だから、ダメ。
今までも、これから先もダメ」
お、おぉ・・・ダ、ダメって・・・
私、27年も、歌って来ているんですが・・・
しかも、明後日、ライブもあるんですが・・・
「知らないわよ、そんなこと。
どうしても、やりたきゃやれば良いのよ。
でも、ダメなものは、ダメね」
ま、まさかのダメ出し。
しかも、連打。
何となく、これからの指針が欲しくて、知人に紹介してもらった鑑定士。
なのに私の30年近い日々、一瞬にして全否定されるの巻。
さらに、夫との相性も最悪。
合っているところがなにひとつない。
一緒に仕事をすると、共倒れ必至とのこと。
わぁ~~!共倒れ以前に、お手上げだ。
結婚して20年。
一緒に仕事をしようと、ふたりで頑張って来たんだよ。
20年。
今さら?
今さら、全部、無駄?
あの・・・
芝居とか、映画とか、演出とか、文章書くのとかは、どうでしょうかね?
「あなた、そういうこと好きなんでしょ。
だったら良いんじゃない?
芝居なら、ガラガラ声でも大丈夫だし」
えー!ちょっと待ていっ!!
なんか、違う。
なんか、違う気がするんですがっ!!
「表舞台じゃなく、少し裏方にまわれば?
あぁ、そうだ、あなた。
声の出し方とか教えるのなら、良いわよ~」
やってます。
そこは、間違ってなかったわけね。
でも、ずっとずっとこだわって来たんだよ。
歌に。
プロであるってことに。
それなのに、それなのに・・・
「14歳のお嬢さんは、あなたたちよりは、余程良いわね。
安心してて良いわよ。
でも、すでに気持ちは、あなたから離れているけどね」
と、とどめを刺しましたね。
完全に、崩壊したでござる。
その後、81歳女性の家庭円満のお話をたくさん伺いながら、私は腑抜けた声で相づちをうち、
「これからも、よろしくお願い致しま~す」
と、曖昧に笑いながらその場を辞した。
呆然自失。
「どうだった~?」
帰宅後、興味津々で尋ねる夫に、吐き出すように言った。
「ダメよ、ダメダメって言われたわよっ!」
告げられた言葉のあれこれを、一言ももらすまいとまくしたてる私に、ふんふんとうなづいて一通り聞いた夫。
「ちょっと考えてみる~」
と、さっさと自室に引っ込んでしまった。
なんだよ~、ひとりにしないでくれよ~。
ダメってなんだ?
相性ってなんだ?
う~ん、整理ができない。
翌日。
食欲のない私の前で、居住まいを正して夫は言った。
「今まで、良い夫婦になろうと頑張って来た。
一緒に仕事をして、良い結果を出そうともした。
でも、あなたとの関係を見直そうと思う。
今までのことは終わりにしよう」
呆然自失からの・・・
青天の霹靂!!
い、いったい、私に、何が起きているんだ?!!
(つづく)