オーディションに合格したい。
プレゼンを成功させたい。
なんとかして、自由に声を出せるようになりたい。
旦那と、ちゃんと話したい。

私のレッスンには、さまざまな目的を持った方がレッスンに来られる。
その度に、夢や目標を叶えようと、私も伴走者になって、一緒にゴールに向かって走りはじめる。
現場には行けなくても、イメージの中で、私も一緒にオーディションを受けている心境になるし、プレゼンをしている緊張も味わうし、旦那さんと向き合ってしゃべったりもする。

中には、私の経験だけでは、とても想像もつかないような、大きくて厳しいチャレンジをしていらっしゃる方もいる。
人それぞれ課題を携えて、もがきながらも乗り越え、自分なりの幸せを発見する。
というのが生きることなのだろうなと、私は生徒さんたちから教わった。

だが、「 のど自慢」出演を目指す!という人ははじめて。
そう来たか!とかなり面食らった。

美代子さんは、とある場所で、「あなたの夢は何?」と聞かれた時に、ふいに
「のど自慢に出て、鐘をならす」と答えてしまったのだそうだ。
「だから、出る」と。

私は歌を歌いステージに立つ人間でもあるが、「のど自慢」という世界は、まったく想定外だった。

「ここで私に言うってことは、美代子さん、決めたのね」
とたずねると、
「はい。決めました」
とのこと。

美代子さんは、決めると必ずやる。
たとえ、周囲の人に驚かれても笑われても、何年かかったとしても、やりとげる。
長いお付き合いの中で、私は何度もそんな美代子さんをみてきた。
今年の還暦記念ライブも、自ら企画し50席のライブハウスを満席にした。

「もう、好きにして!」
とふたりで笑いながら、なかばやれやれと呆れながら、
「さて作戦会議を開きますか」とあいなった。
「歌唱力では勝負できないからね。
何で勝負する?」
美代子さんの、自己プロデュース修行の日々のはじまりでもある。

私じゃないあなたは、私が観たことのない世界をみて体験する。
それは、本当にステキなことだなと心底思う。
だから私は、人と話したい、人を感じたいのだと気付いた。

ゴールは遠いけど、ファイトだよ!美代子さん。