「もちろん、小さなトラブルはありました。
 でも、誰かにひどくいじめられたわけじゃない。

 むしろ、気遣ってくれていた、と思う。

 だけど、世間の人はみんな私を嫌っている。
 私を陥れようとしている。

 そう、感じてしまいます。

 もしかしたら、私

 ひとりいじめられっ子・・・?」

  ◆◆◆

ある生徒さんが、レッスン中に言った言葉です。

多かれ少なかれ、誰にでも、こんな気持ちになる
ことは、あるのかもしれません。

私も、ありました。

以前の私は、コミュニケーションが大の苦手。
台所でメソメソ泣いていたら、夫が言いました。

「世界中のみんなが私を嫌ってるなんて、
 あんた、そんな有名人でもないのに。

 世界に人口が何十億人いると思ってんのよ。
 そんなこと土台無理でしょ。
 
 嫌われても、せいぜい4~5人程度だよ」

その時は、腹が立ちましたね~。
こいつ、全然わかってないって。

でも、言われてみればその通り。

  ◆◆◆

認知が、凄まじくゆがんでいたんです。

幼少時に虐待を受けたり、適切な愛情を受けられ
ず育つと、次第に認知がゆがんでくるんです。

そんな時は、「それ、おかしいよ」と指摘して
くれる、冷静な目や耳が必要になります。

私の場合、ゆがみにとわわれて苦しむたびに、
夫がせせら笑いました。

「あ、また病気が出た!わははは!
 世界中のみんなが私を嫌ってる病~♪」

その度に、怒り、泣きながら抵抗をしたのですが、
次第に自分が変だと気付きました。

そうだよね。
そんなわけないか。

と笑えるようになったら、しめたものです。

  ◆◆◆

認知のゆがみが改善されてから、生きることが
とても楽になりました。

人から好かれる・嫌われるということが、私には
それほど重要ではないと気付きましたしね。

でも、世界をゆがんで認知することの苦しさは、
よくわかります。

ですから、今の思考をちょっとストップさせて、
「本当にそうかな」と見つめてみる。

そして、コミュニケーションに対する恐れを、
勇気を持って手放してみる。

自分から、一歩を踏み出してみましょう。

本当に自由な発声を楽しめるのは、
きっと、それからです。


●認知療法を提唱している心理学者デビット・D・
バーンズの提唱した「認知の歪み・10パターン」
は、こちらのサイトに掲載されています。
http://tinyurl.com/9wd7rot

 あなたの毎日が、歓びと美しい響きに満ちて
     幸せでありますように。

(2012年11月9日・発行号より)