先日、2月1日のライブの音合わせに行った。
渋谷のオーラソーマバー*スプリングノートのオーナー&シャンソン歌手のほしりえこちゃんと一緒。

思い起こせば1994年に、それまでレギュラーで出演していたシャンソンのライブハウスを全てやめて以来だから、もう18年になる。
ちょくちょく歌ってはいたのだが、ピアノ一本で歌うというのは本当に久々。

ブランクあるしねェ~、なんて笑っていたら、シャンソンのお店で、ピアニストや先輩歌手に、怒鳴られながら修行していた時代が蘇ってきた。
あれ?
なんだか、緊張して来たぞ。
りえこちゃんは、この頃シャンソン歌手として歌ってもいるので、なんだか落ち着いてにこやかに笑っている。
りえこちゃんの話が、耳に入らない。
あらま、本気で緊張してきた。
自分の心臓のドキドキだけが感じられる。
どうした、濱田。
リハーサルなのに。
シャンソンに、よほどのトラウマがあるのか。

いや、私は18年、けっして遊んでいたわけではないぞ。
結婚し出産し子育てし、ボイストレーナーにもなって、ステキなメンバーさんにもたくさん出会えたじゃないか!
18年といえば、小・中・高・大・大学院を出て、戻って来ましたくらいの感じで、成長しているんだぞ。

と必死で自分に言い聞かせるのだが、妙な緊張感がとれない。
約束の場所は、赤坂TBS前の音楽スタジオ。
TBSといえば、役者をやっていた頃に、良く通ったテレビ局。
あぁ、ここでもディレクターに叱られたよ・・・
と、思考回路が完全に叱られ女モードに入っている。

そこに、今回のピアニスト・小泉源兵衛先生登場。
ジャラリとチェーンを付けた細身のGパンに革ジャン。
白髪の長髪をひとつにまとめ、目深にかぶったキャップの奥から切れ長の目が見える。
一瞬、「シェケナベイベ―」という声が、頭の中をかすめた。

「す、すみません!」
反射的に、謝りそうになった。
なんか、怖い・・・
小泉先生とは、かつて銀座のお店で、何度かお仕事をご一緒した。
何も言われなかったが、すごく怖かったというかすかな記憶だけがある。

りえこちゃんは、小泉先生の弟子でもある。
お弟子さんには、おすぎとピーコのピーコさんや、宝塚の生徒さんもいらっしゃる。
アイドルたちの演奏や、私の大好きな布施明さんのライブも年間120本くらい弾いていらした大御所だ。

はっと気づくと打ち合わせが始まっていた。

小泉「ここから、ここまで濱田さん頼むね」
濱田「・・・?、は?はい?」
ほし「あ~、真実ちゃんがここの仕切りですね!わかりました!」

もう、久々ですから~などという言い訳は通じない。
いきなりプロの会話が始まっている。
五感センサー全開にして、打ち合わせに没頭。
雑談する余裕もなく、ただひたすらコクコクとうなずく。

「お前は、今日入ったばかりの新人か!」
と自分で自分に突っ込みながら、ギクシャクとした動きでピアノフロアーに入った。

(つづく)