「私、以前は暗い洞窟に入っているような状態でした。中から恐る恐る外の世界を眺めては、誰かから攻撃されないかと、ビクビクしながら生きていました。声のレッスンをすることで、この頃ようやく、息苦しい洞窟から抜け出せました。でも、まだ透明なカプセルに入っていたんですね・・・」
A子さんは、しみじみとつぶやきました。
会社の仕事でストレスを溜め込んで、うつの状態に苦しんだ時期もあったA子さん。声のレッスンに通い始めて、1年近くが過ぎました。
自分と向き合い、混乱しながらも、賢明に闘ってきたA子さんは、現在会社を辞めて、新しい自分の道を歩き始めました。
◆世界が遠い・・・
ところが、歌のレッスンになると緊張や力みとれません。
充分に、歌うことを楽しめないのです。
「どうして、いつも苦しくなるのかわかりません。
音も聴こえてこない、声も届かない、苦しいばっかり・・・もっと楽に、のびのびと歌いたいのに出来ない・・・何だか、世界が遠くにあるように感じます。透明のカプセルから出たいのに、もっと自由にコミュニケーションをしたいのに、どうすれば良いのかがわかりません」私は、A子さんと一緒に自由への道を探りました。
◆頭と身体を結ぶ呼吸
A子さんは声を出すときに、とても呼吸が浅くなっていました。
息を詰めて感情を押し殺し、緊張しながら人と接していたようです。これでは、誰かと心地良くコミュニケーションをとることは難しくなります。そこで、しっかり息を吐きながら声を出すレッスンを繰り返しました。それと同時に、A子さんのようなタイプの人は、頭で物事を処理しがちです。頭と身体をつなげるように、身体の中心(臍下丹田・せいかたんでん)を意識した、身体の使い方をレッスンしていったのです。
◆あれ!聴こえます!!
ある日のレッスン中に、A子さんは驚いたように言いました。
「あれ!!聴こえます。
初めて、伴奏がしっかりと聴こえました。自分の声も聴こえます!息を、しっかりと吐いて歌うことだけ意識しました。
他のことは、何もしていません。それなのに、ちゃんと聴こえるし、とても気持ち良く歌えます。
こんなこと、初めでです!」
骨盤の周辺にある筋肉を使いながら、息を遠くに送ることだけを意識しながら歌ったA子さん。
自分と外界を隔てるカプセルは、呼吸をしっかり続ける、呼吸に乗せて声を出すということで、見事に消えてしまったのです。
◆呼吸は私と人とをつなぐ
もちろん、A子さんのような気付きを体感するためには、身体の緊張をほぐしたり、自分の心と向き合い続けるという作業も不可欠です。かなり困難で心の痛みも伴う道程だったと思いますが、A子さんは決して諦めませんでした。「今、ようやく自分の周囲の世界がリアルに感じられます。
やっと、ここまでこれました!素直に嬉しいです。 ここからが、本当のスタートですね!!」
そう語るA子さんの声は、以前のように甲高く平板な声ではなく、深みと温かみのある、とても豊かな声に変わっていました。
またカプセルに入りたくなったときは、入って休めば良いのです。出入りは、自由ですから。でもA子さんは、きっとこの世界に生きていることが楽しくなって、カプセルの中でじっとしていることは、もう望まないでしょう。
呼吸は、私たちの命の源です。
そして、その呼吸に音がついたものが声。
声は、「自分の命」と「人の命」をつなぐ音なのです。
(2007年9月10日発行号より)
A子さんは、しみじみとつぶやきました。
会社の仕事でストレスを溜め込んで、うつの状態に苦しんだ時期もあったA子さん。声のレッスンに通い始めて、1年近くが過ぎました。
自分と向き合い、混乱しながらも、賢明に闘ってきたA子さんは、現在会社を辞めて、新しい自分の道を歩き始めました。
◆世界が遠い・・・
ところが、歌のレッスンになると緊張や力みとれません。
充分に、歌うことを楽しめないのです。
「どうして、いつも苦しくなるのかわかりません。
音も聴こえてこない、声も届かない、苦しいばっかり・・・もっと楽に、のびのびと歌いたいのに出来ない・・・何だか、世界が遠くにあるように感じます。透明のカプセルから出たいのに、もっと自由にコミュニケーションをしたいのに、どうすれば良いのかがわかりません」私は、A子さんと一緒に自由への道を探りました。
◆頭と身体を結ぶ呼吸
A子さんは声を出すときに、とても呼吸が浅くなっていました。
息を詰めて感情を押し殺し、緊張しながら人と接していたようです。これでは、誰かと心地良くコミュニケーションをとることは難しくなります。そこで、しっかり息を吐きながら声を出すレッスンを繰り返しました。それと同時に、A子さんのようなタイプの人は、頭で物事を処理しがちです。頭と身体をつなげるように、身体の中心(臍下丹田・せいかたんでん)を意識した、身体の使い方をレッスンしていったのです。
◆あれ!聴こえます!!
ある日のレッスン中に、A子さんは驚いたように言いました。
「あれ!!聴こえます。
初めて、伴奏がしっかりと聴こえました。自分の声も聴こえます!息を、しっかりと吐いて歌うことだけ意識しました。
他のことは、何もしていません。それなのに、ちゃんと聴こえるし、とても気持ち良く歌えます。
こんなこと、初めでです!」
骨盤の周辺にある筋肉を使いながら、息を遠くに送ることだけを意識しながら歌ったA子さん。
自分と外界を隔てるカプセルは、呼吸をしっかり続ける、呼吸に乗せて声を出すということで、見事に消えてしまったのです。
◆呼吸は私と人とをつなぐ
もちろん、A子さんのような気付きを体感するためには、身体の緊張をほぐしたり、自分の心と向き合い続けるという作業も不可欠です。かなり困難で心の痛みも伴う道程だったと思いますが、A子さんは決して諦めませんでした。「今、ようやく自分の周囲の世界がリアルに感じられます。
やっと、ここまでこれました!素直に嬉しいです。 ここからが、本当のスタートですね!!」
そう語るA子さんの声は、以前のように甲高く平板な声ではなく、深みと温かみのある、とても豊かな声に変わっていました。
またカプセルに入りたくなったときは、入って休めば良いのです。出入りは、自由ですから。でもA子さんは、きっとこの世界に生きていることが楽しくなって、カプセルの中でじっとしていることは、もう望まないでしょう。
呼吸は、私たちの命の源です。
そして、その呼吸に音がついたものが声。
声は、「自分の命」と「人の命」をつなぐ音なのです。
(2007年9月10日発行号より)