Mさんは、老人介護施設にお勤めの看護師さんです。
認知症の方の入所も多く、徘徊や暴言、時には叩かれたり、物を投げつけられたりすることもあるようです。
「最初は、そんなお年寄りに、どう対応して良いのかわかりませんでした。
でもね、歌を歌っている時は、皆さんとても嬉しそうなんです。
まったくしゃべらない人が、突然声を出して歌ったり、いつも怒ってばかりいる方が、民謡を唄っている時はご機嫌だったり。
歌ってすごいなぁ~!って感じました」
Mさんはその感動から、ご自分も歌ってみたいと思うようになったそうです。
◆思わず歌が・・・
Mさんは、初めて体験するボイストレーニングを、とても楽しんでいました。
「声を出すって、気持ち良いですね~」
初めて体感した、声を出すことの歓びや、歌うことの楽しさ。
Mさんは、つい仕事場でも歌ってしまったようです。
すると、今までまったく受け入れてくれなかった人が「その歌、なに?」と、話しかけてくれたり、一緒に歌う人が現れたり、「もっと聞かせて」とリクエストされたり・・・
歌うことで、部屋の空気が変わることもわかりました。
◆ハミングをしながら
それでも、暴れる人、興奮する人はいます。
気持ちがたかぶって眠れなくて、真夜中に大声を出す人もいます。
そんな時に、Mさんはある実験をしてみました。
「イライラしている人の身体に触れて、静かにハミングをしてみたんです。
背骨を響かせるように意識しながら。
そしたら驚いたことに、ふっと大人しくなってくれたんです。
子守唄を聞いている、赤ちゃんみたいでしたよ」
いつも上手く行くとは限らないけど、と笑いながら、Mさんの目はとてもキラキラと輝いていました。
それ以来、叩かれる回数がぐんと減ったようです。
◆ハミングは「愛」
親に背負われて、子守唄を聞いていた幼い頃。
背中から響きと共に聴こえてくる声は、大いなる安らぎを、私たちに与えてくれました。
安心していいんだよ、大丈夫だよと、抱きしめられているような幸福感。
それは、声によって背骨が響いていたから。
温もりと共に、息遣いや振動が伝わってきたから。
生きているもの同士のふれあい、共鳴。
振動しあえる幸福。
その心地良さを、私たちは誰もが知っています。
そこには、緊張やいらだち、争いは存在できません。
Mさんのお話しを伺いながら、ハミング(共鳴)は、「愛」なのだと気付きました。
Mさんの愛を受け取った方々は、幼い頃の自分に戻って、安心して眠りについたのでしょう。
毎日の暮らしの中に、愛(共鳴)がベースにあるのなら、何も心配することはないのだと信じられるようになりました。
(2007年8月29日発行号より)
認知症の方の入所も多く、徘徊や暴言、時には叩かれたり、物を投げつけられたりすることもあるようです。
「最初は、そんなお年寄りに、どう対応して良いのかわかりませんでした。
でもね、歌を歌っている時は、皆さんとても嬉しそうなんです。
まったくしゃべらない人が、突然声を出して歌ったり、いつも怒ってばかりいる方が、民謡を唄っている時はご機嫌だったり。
歌ってすごいなぁ~!って感じました」
Mさんはその感動から、ご自分も歌ってみたいと思うようになったそうです。
◆思わず歌が・・・
Mさんは、初めて体験するボイストレーニングを、とても楽しんでいました。
「声を出すって、気持ち良いですね~」
初めて体感した、声を出すことの歓びや、歌うことの楽しさ。
Mさんは、つい仕事場でも歌ってしまったようです。
すると、今までまったく受け入れてくれなかった人が「その歌、なに?」と、話しかけてくれたり、一緒に歌う人が現れたり、「もっと聞かせて」とリクエストされたり・・・
歌うことで、部屋の空気が変わることもわかりました。
◆ハミングをしながら
それでも、暴れる人、興奮する人はいます。
気持ちがたかぶって眠れなくて、真夜中に大声を出す人もいます。
そんな時に、Mさんはある実験をしてみました。
「イライラしている人の身体に触れて、静かにハミングをしてみたんです。
背骨を響かせるように意識しながら。
そしたら驚いたことに、ふっと大人しくなってくれたんです。
子守唄を聞いている、赤ちゃんみたいでしたよ」
いつも上手く行くとは限らないけど、と笑いながら、Mさんの目はとてもキラキラと輝いていました。
それ以来、叩かれる回数がぐんと減ったようです。
◆ハミングは「愛」
親に背負われて、子守唄を聞いていた幼い頃。
背中から響きと共に聴こえてくる声は、大いなる安らぎを、私たちに与えてくれました。
安心していいんだよ、大丈夫だよと、抱きしめられているような幸福感。
それは、声によって背骨が響いていたから。
温もりと共に、息遣いや振動が伝わってきたから。
生きているもの同士のふれあい、共鳴。
振動しあえる幸福。
その心地良さを、私たちは誰もが知っています。
そこには、緊張やいらだち、争いは存在できません。
Mさんのお話しを伺いながら、ハミング(共鳴)は、「愛」なのだと気付きました。
Mさんの愛を受け取った方々は、幼い頃の自分に戻って、安心して眠りについたのでしょう。
毎日の暮らしの中に、愛(共鳴)がベースにあるのなら、何も心配することはないのだと信じられるようになりました。
(2007年8月29日発行号より)