作品や表現に対して、付加価値を付けて宣伝をするというのが、とても嫌だ。
「必ず癒される〇〇」とか、「泣ける〇〇」とか。
作家が障害を持っていればなおのこと、「不自由な身体なのに、スゴイ〇〇」という表現は、作家に対して失礼だと思う。

障害があろうがなかろうが、作品や表現が素晴らしければ人の魂をゆさぶるし、そうでなければ何も動かせない。
ただ、それだけのことだ。

だけど、この映画を観ると、私のそんなこだわりも、もうどうでもいいやと思えてきた。
誰が何を言おうが感じようが、厳然とその瞬間にある表現の全てを受け取れば良い。
言葉のもっと先の先にあるものを信じ、ただ感じ取れば良いのだと思った。
ただ、純粋にシンプルに。

幸せの太鼓を響かせて」は、知的障害者の和太鼓グループ「瑞宝太鼓」を追ったドキュメンタリー映画。

彼らはプロの演奏家であり、年間130ステージをこなす。
彼らが、元鬼太鼓座のリーダーと出会い、東京でのコンサートを行うまでを縦糸に、メンバーの個人の生い立ちや現在の暮らし振りを横糸に、作品は織り上げられている。

リズムを言葉に置き換えて彼らに伝える演奏者は、プロとして決して妥協をしない。
本気で彼らと関わり、鼓動を追い続け、作品を練り上げて行く。
その情熱に応えて、一瞬も途切れぬ集中力で太鼓をたたき続ける瑞宝太鼓のメンバー。

生命力がほとばしる演奏は、スクリーンを通してでも、まっすぐに伝わってくる。
2時間が、少し長く感じられるところもあったが、「作り」の部分とありのままの部分のバランスも絶妙で、映画作品として素直に楽しめた。

障害があろうがなかろうが、トラウマがあろうがなかろうが、家庭環境がどんなものであろうが、自分の魂を表現する芸術は、全てを超える。
私が伝えたいのも、このことだったよなと再認識できた。

帰宅する時、何やら背筋がすっと伸びて、呼吸がぐっと深まった。