ある生徒さんは、声が出にくくて、何年も何年も自信を失ったままでいた。

そしてつい最近、恋愛も終わり、仕事も失くしかけていることが判明。

レッスン室で、見るからにガックリと落ち込んでいる生徒さんを前に、私は思わず叫んだ。

「チャ~ンス!」

生徒さんもビックリしたと思う。
私も、自分の言葉にビックリした。

それから、次々と勝手に言葉が出てくる。

「何にもなくなったよね。ゼロになったんだよね。どうする?
 
 それでも杖にすがってあるく?
 立てない、自信がないって、また言うの?

 杖は折れちゃったよ。どうする?
 自分で立つしかないでしょ。

 さぁ、立って、立つのよクララ!」

私は、アルプスの人かっ!

きょとんとしている生徒さんを見て、やや反省。
言葉の最後に「みたいな…」と付け足してしまった。

さらに、声が出にくいことで今までまったく歌おうとしなかった彼女に、「歌おうよ」と誘ってみた。
今まで、私も怖くて誘えなかった。
でももう、こうなったら、体育会系で行く。

彼女の骨盤を上から下へと力任せに押さえて、「さぁ、自分の足腰で反発しながら、ウエストを意識して歌ってごらん!そりゃ~~~!!DASH!

すると…

あぁ、歌える。
見事に声が出る。
嬉しい!!

「ほら、歌えるじゃん!グー

「あら、歌えますねぇかお

生徒さんは、私のアホさ加減に、「もう、いいや~」と半ばあきらめ気分になってくれたのかもしれない。

でも私は、あきらめるのって、大事だと思っている。
あきらめるのは、手放すってこと。

あきらめてから、始まることがある。
あきらめてから、声が自由になる。

「何か、言いたいことはある?」レッスンが終わって、何か言いたげな彼女に聞いてみた。

「あの…、もっと歌いたい」

「了解!!」

ゆっくりで良い。

自分の足で、しっかりと歩いて行こう、ね!クララ!


◆ボイストレーニングのマミィズボイススタイル
◆濱田真実のホームページ