20代の彼は、黒人ののびやかな高音の声に憧れている。
圧倒的なパワー、深さ、豊かさ、しっとりした音質。
大好きなのだそうだ。
しかし、彼の持っている声は、そんな音質とは違っていて、乾いているが、肌触りの良い風のような声。
それはそれで、とっても魅力的だと思うのだが、嫌だと言う。
聴くものを圧倒したくて、大声で歌うけど、自分の声が聴き取れなくてリズムも音程も狂ってくる。
「もっと力を抜いて、語るように歌ってみて」という私の指示に、しぶしぶ従った彼。
すると、実に味のある素敵な歌になり、リズムも音程も狂わなくなる。
「良いじゃない、それ。すっごくステキだよ!…嫌なの?」と聞くと、「嫌だ!」。
そうか・・・、自分自身を受け入れるまでには、まだまだ時間がかかるかもね。
私も、別人の声になりたくて、物凄く自分の声を否定していた時期があったもの。
でもね、誰かを圧倒的に感動させるためには、まず自分自身の根っこをしっかりつかんでいるってことが大事なの。そこからしか始まらないものがあるよ。
オレは、オレ以外の何者でもない。
と感じられるようになるまでは、がむしゃらに、やるだけやってみる必要もあるかも。
頑張れ~!青年!!