「私ね、何だか妙なかぶりものを付けて生きているみたい」


30代のMさんは、私に言いました。




「かぶりもの?バラエティに出てくる、動物ヅラのマスクとか?」


「そう!」




私の頭の中には、着ぐるみやかぶりものを身に付けて、居心地悪そうにしているMさんの姿が思い浮かびました。




◆これ、格好良くないですか?




ある日の歌のレッスンでのこと。


Mさんの歌を聞いて、私はびっくりしてしまいました。




ちりめん状のビブラート、つまり細かな震えが、歌の全面に渡って出現していたのです。




「ねぇMさん、この歌はポップな軽い歌なんだから、そんなに力まなくても、もっと素直に歌っていいんだよ」




私がそう言うと、Mさんもびっくりしたような顔になりました。




「素直に歌ってもいいんですか?

上手く聞かせるためには、声を揺らした方が良くないですか?

これ、格好いいんだと思ってました」




Mさんは、雰囲気を良く見せたり、響きある声にするためには、のどに力を入れて、声を震わせた方が効果的だと思い込んでいたようです。




◆自分を見せるのが怖い




「歌に出ちゃうんですね・・・


私は、自分を素直に見せるのが怖いんだと思います。

格好悪いと思われるのが嫌なので、必死でそう思われないように自分を作ってきました。




最初はそれで、安心していました。


自分の本当のダサい姿は誰にも見えてないって。


 


でもそれって、とっても不細工なかぶりものを身に付けていただけなのかもしれません」




Mさんは、冷静に自分を分析していました。




そのかぶりものが、Mさんにとって、とても効果的だった時期もあったのでしょう。




だけど、あまりにも依存してしまうと、今度は、そのかぶりものを取る時期を見失ってしまいます。


すると、とっても息苦しくなるんです。




◆私、実は○○だったんです!




この頃、男女や年齢を問わず、この自分の作ったかぶりもののせいで、息苦しくなっている人が多いように思います。




「私は目立たない地味な人間」

「私は、誰にでも優しくていつでも笑顔」


これも、妙なかぶりものです。




それでいて、本当の自分、確かな自分を見失った息苦しさで、ほとんどの人が、呼吸が浅くなっていて、身体がカチカチに緊張しているのです。




「私、実は○○だったんです~!」




と告白して、ずるっとかぶりものを取るときまでが、人間苦しいのだと思います。


思い切って、とっちゃうと、案外すっきりして風通しが良くなるもの。




「ふぅ!あぁ、気持ちいい~!軽~い!なんだ、もっと早くとっておけばよかった\(^o^)/」


と、きっと思えるはずです。




◆自分を100%受け入れる




だって、かぶりものをするって、世界に一人しかいない自分を、まったく受け入れてないってことですものね。




格好悪くても、ダメでも、○○でも、○○○でも大丈夫!


その方が案外、気楽に「幸せ」に、他者と関わっていけますよ。


格好つけなくてもいいし!




ちょっと勇気を出して、そのかぶりものをとってしまいましょう。


慣れるまではちょっと寒くても、格段に幸せ度はアップします。




それと同時に、声も呼吸も解放されたように、明るく軽く輝きはじめます。


ね、勇気を出しましょう!




(2006年8月16日発行号より)