この頃は、ビデオカメラが普及したおかげで、自分の姿を映像で観
ることが多くなりましたね。
自分の動いている姿を、初めて映像で観たとき、あなたはどんな感
想を持ちましたか。
私は、ショックでした・・・
撮影されていることを、充分に意識して映されている映像は、まだ
耐えられます。
でも、まったく無意識に歩いている自分の姿、それも、後姿を観て
しまったとき、「え?誰?この人」とつぶやいてしまいました。
そこには、気の抜けた炭酸のような、薄ボンヤリとした、ガニマタ
の女性が映っていたのです。(ToT)/~~~
この「気の抜けた炭酸」と感じた原因は、背中。
背中が、死んだように無表情だったのです。
◆背中の表情?
そう、背中って表情があるんです。
周囲の人を、ちょっと観察してみましょう。
気力を感じさせない背中、ピリピリと緊張している背中、疲れてい
る背中、かたくなな背中、悩みが多そうな背中、気が散漫な背中。
反対に、とてもスッキリと元気そうな背中もありますし、ゆったり
と大らかな背中や、凛々しく美しい背中もあります。
この違いは、どこから感じられるのでしょうか。
姿勢・・・?
そうです。背中の表情のステキな人は、背筋が、すっと通っていま
すよね。
それに、無理な力みや緊張がありませんし、自然体です。
背中が解放された感じとも言えますね。
◆背中がない・・・
私たちは、鏡に映る前半分を意識して生活しています。
わざわざ合わせ鏡までして、後姿を確認する人は少ないでしょう。
そうすると、意識していない後姿は、次第に自分から切り離されて
しまいます。
後ろ半分が、ないに等しい状態です。
こうなると、背中は「気の抜けた炭酸」状態になり、輪郭のぼんや
りした、活力のない背中になってしまうのです。
これを、後ろからいろんな人が見ています~。
どんなに、前半分を飾っても、背中の腑抜けた状態は、見破られて
しまうわけです。
◆呼吸も声も背中で
実は、腹式呼吸にしても発声にしても、この背中が、とても、とて
も、重要なのです。
深い呼吸は、背中側の肋骨の下部を、外側に広げるように使います。
胸側よりも、背中側の肺が大きいためです。
背中が自由に使えるようになると、自然に呼吸は深まります。
また声を出すときは、背骨のラインを意識します。
声は、骨を振動させることで、響きがよくなるので、背骨を意識し
て、振動を感じながら発声します。
そのためには、背中に意識を向ける必要があるのです。
◆背中の感性
腹式呼吸と発声のレッスンを続けていると、背中の感性が高まりま
す。
グループレッスンを2年も続けて下さっている、ある生徒さんは、
「背中が敏感になったのか、後ろに来た人が、いい状態かそうでな
いのかが、背中で感じとれるようになりました。」
と教えてくれました。
これは本来、人間に備わっていたはずの能力です。
暗闇の中を歩くと、次第に感覚が研ぎ澄まされていくのがわかりま
すよね。
普段、聞こえなかった音が聞こえるようになったり、天候の変化を
肌で感じたりもします。
それと同じように、背中に意識を向けることで、背中の感性が、研
ぎ澄まされて、背中がイキイキと活性化してくるのです。
自分の姿にショックを受けてから、数年。
今の私は、どんな姿でビデオの映像に映し出されるのでしょうか。
知りたいような、恐ろしいような・・・
(2006年6月23日発行号より)
◆ボイストレーニングのマミィズボイススタイル