◆ある日の出来事
ある女性は幼い頃、お母さんの誕生日に歌をプレゼントしたいと
思いつきました。
テレビで憶えた大好きな歌を、お母さんの前で歌ったのです。
「音程がなってない!それに、下品な歌・・・」
お母さんは、喜ぶどころか吐き捨てるように言いました。
女性はその日から、いっさいの歌を心に閉じ込めて、聴くことも
歌うこともなくなったそうです。
この女性の例は、極端かもしれません。
でも私たちの周りには、そんな心ない反応や言葉に深く傷つき、
声を押し殺して生きている人たちがたくさんいます。
◆何とかならないの・・・?
家族や周囲の人間の不用意なひとことは、幼い心を真っ直ぐに
突き刺します。
とくに6歳以前に、声や自分の表現を否定され続けていると、脳
の中に「否定形」の反応装置が埋め込まれたのと同じです。
「レモン」を思い浮かべると唾液が出るように、「声」を出そうと
すると、全身が緊張し息やノドが苦しくなるのです。
それで苦しんでいる人が、どんなに多いことか・・・
しかも、そんな人の聴力をテストすると、5歳や6歳の頃に聴こ
えはじめるといわれている音の高さ(周波数)が、あまり聴こえ
ていない場合もあるのです。
つまりその周波数の音が聴こえるようになる頃に、「耳(心)を
閉ざしてしまった出来事がある」と、聴力が教えてくれている
のです。
◆あなたは音痴ではない!
何の屈託もなく、スクスクと痛みを知らずに成長し、そのまま
幸福に生きていける人なんていないのねと、この頃気付きま
した。
辛いことや悲しいこと、痛みや苦しみは誰にでもあります。
それを超えて、自分自身の幸福を見出し歩き出すということ
が、本当の意味での「生きる」ということなのかもしれません。
だとしたら、とりあえず声を出すことから初めてみませんか?
小さな声で歌うことから初めてみませんか?
たくさんの生徒さんにお会いしましたが、まったく音がとれなく
て本物の「音痴」だと感じた人なんて、ひとりもいませんでした。
間違ったインプットに振り回されて、歌えない、声が嫌い、自分
はダメだと思い込み、耳をふさぎ自分の声を拒否していただけ
です。
ほんの少しの勇気が必要です。
でもそれで、あなたは呪いから解き放たれます。
◆リセットしましょう
イヤだ、嫌いだ!と思っていた自分の声や自分自身に向き合う
のは、辛いこともあります。
情けなくて、がっくりくることだってたくさんあるでしょう。
でも、あきらめないで。
必ず、自分の声に「ゾクゾクするほど感動する時」がやってきま
す。
今はゆっくりで構いません。
出来ることから始めましょう。
下記の方法は簡単なものですが、脳の間違ったインプットを、
おだやかにリセットしてくれるはずです。
●お日様の中を軽快にハミングしながら歩く
●自然界の音や美しい音楽を意識して聴きとる
●右耳を使って聴く
●身体をほぐし、深い呼吸を楽しむ
●自分批判をやめて、無心に自分の声を聴く
声は、あなた自身です。
あなたの声が豊かに輝き、歓びと美しい響きに満ちて
幸せでありますよう心よりお祈りしています。
(2009年2月6日発行号より)
◆ボイストレーニングのマミィズボイススタイル