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★子どもたちへの贈り物


赤ちゃんの頃には、自然に出来ていた呼吸や発声が、成長して行くに

つれて、流れを止められ無理な負荷がかかった呼吸に変化して行きま

す。


ほとんどの人がそのようです。それもごく幼いうちから…。


実際深い呼吸を体験して行くうちに、流れを止められた時点に記憶が

戻り、幼い頃の哀しみを思い出してしまったり、押さえ込んでいた感情

が溢れ出して涙が止まらない、などという状況に良く出会います。


私たちは、何故そんなに幼いころから、心や身体に負担をかけて生きて
行くことを余儀なくされたのでしょうか?


子供たちは家庭や学校の中で、どんなに事態に追い込まれても、それ

を受け入れて生きて行くしかありません。


怒りや哀しみを上手く表現出来ないために、必要以上に我慢をしたり、
別のことで気を紛らしたりすることが子供たちの数少ない選択肢です。


その結果、身体は硬くなり自由な動きが束縛されて行きます。


「キレる」「むかつく」子供たちは、どんどん浅い呼吸になって行きま
す。


身体を思いっきり動かして遊ぶことも、感情をどーんと解放する機会も

極端に少なくなっているのかもしれません。


この数年、子供たちが巻き込まれる痛ましい事件が相次いでいます。


私も4歳の女の子の母親ですので、そんな事件を知るたびに動揺し胸

が痛みます。


どうすればいいのか、中々答えは出せません。

そんな事を考えている時、娘が私にヒントをくれました。

その日は、娘の4歳の誕生日でした。

お祝いに江ノ島水族館で遊んだ後に、近くの海に散歩に行きました。
娘にとっては初めての海です。


彼女は人見知りと場所見知りが激しく、慣れない場所には緊張して動け
なくなることの方が多いのですが、その日は違いました。


いきなり洋服のまま海に飛び込み、笑い、はしゃぎ、叫び声を上げなが
ら、夢中になって遊び始めました。


見知らぬ人にも笑いかけています。

正直なところ、彼女のそんな反応に驚いてしまいました。


私もついつられて海に飛び込んでしまいました。


その時の身体の感覚や解放感は自分でも驚くほど清々しいものだったの

です。


私たちは、自然の一部であることから切り離されて来たことに思いが至
りました。


そんなことは、ずっと以前から気が付いていたつもりでしたが、思って
いる以上に、深刻な事態に陥っていたようです。


私たちが自然との繋がりを取り戻す一番身近な方法は、深い呼吸をする
こと、そして本来の声を発して生きることだと私は思っています。


そして、豊かな自然の中に身を置くと、人は意識しなくても深い呼吸に
戻り、声を発しながら遊ぶ感覚に戻れるということを、娘から教えられ
ました。


未来を担う子供たちにしてあげられる一番の贈り物は、案外そんな当た
り前のこと、そして何よりも大切で難しいことなのかもしれません。


(2004年7月31日発行号より)



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