バイデン大統領が新駐日大使に指名したエマニュエル氏の悪評
明治を代表する外交官、陸奥宗光を覚えていますか?
日清戦争の前後に渡り、欧米列強との折衝でその名を高めた外交官です。
彼の書き残した『蹇蹇録(けんけんろく)』には当時の国際情勢や日本外交の舞台裏が克明に記されています。
日本外交の先駆者とも言われる陸奥宗光が53歳で亡くなったのが1897年(明治30年)8月24日のことでした。
言うまでもなく、今や日本外交は岐路に差し掛かっています。
アフガニスタン情勢を見るにつけ、アメリカの外交手腕に疑問を感じざるを得ません。
そんなアメリカのバイデン大統領は長く空席になっていた駐日大使にラーム・エマニュエル氏を指名すると発表。
同氏は日本ではあまり知られていませんが、元シカゴ市長で、クリントン、オバマ両政権で大統領補佐官を務めた人物です。
バイデン政権発足に当たっては運輸長官を目指して、派手な猟官運動をしましたが、議会からの猛反発で実現しませんでした。
なぜ猛反対に遭ったのでしょうか?
それはシカゴ市長時代の2014年、17歳の黒人少年が警察官に16発も銃弾を撃ち込まれて殺された事件をもみ消そうとしたからです。
翌年の市長選挙を目前にして、治安対策に効果を上げていることをアピールするため、殺された黒人少年の両親に500万ドル(5億円超)の和解金を支払い、不都合なビデオの公開を差し止めようとしたエマニュエル市長。
しかし、裁判所の命令でビデオは公開され、黒人による市長弾劾の動きが加速しました。
そんな人種差別的言動が目に余っていたため、議会からの支持は得られず、閣僚ポストは見果てぬ夢に終わったわけです。
そこに降って沸いたのが「駐日大使起用」というバイデン発言。
日本政府は「バイデン大統領の厚い信頼を得ている人物であり、日米同盟関係重視の姿勢を表すものとして高く評価する」と発表。
とはいえ、民主党の上下両院議員からも「悪い冗談か。良心ある上院議員は皆反対するだろう」と早くも指名拒否の声が上がっています。
これほどいわくつきの人物を駐日大使に指名するバイデン大統領もどうかと思いますが、もろ手を挙げて歓迎する日本政府の外交姿勢には開いた口が塞がりません。
陸奥宗光なら何というでしょうか?
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