アメリカ、ロシア、中国の持ちつ持たれつの軍事関係:得をするのは誰か?
安倍首相はベルギー・ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部で中国の軍事拡大路線を批判する演説を行いました。
その矛先は「軍事費増大の不透明性」に向けられたもの。
確かに中国の軍事費は毎年10%以上の伸びを示し、26年間で40倍に拡大した模様です。
しかし、そこを非難しても中国には馬耳東風でしょう。
実際、自国の軍事費の詳細を明らかにする頓馬な国はありません。
たとえば、小生が最近訪問したサウジアラビアの場合。
同国はアメリカと緊密な軍事協力関係を誇っています。
そのサウジアラビアが実は中国から弾道ミサイル「東風3号」を輸入しているのです。
核弾道を搭載でき、射程距離は3300キロ。
あまり知られていませんが、サウジアラビアは今やイギリス、日本、フランスを抜き、世界第4位の軍事予算大国に躍り出ました。
また、湾岸諸国のバーレーンはロシアからの武器輸入を拡大中です。
バーレーンといえばペルシャ湾に面し、アメリカ海軍に軍港を提供している国。
そんなアメリカの同盟国がロシアから武器の輸入に奔走しているわけです。
更に言えば、アメリカですらロシアからロケットエンジンを購入しているのですから、正に「何でもあり」の「ブレイブ・ニューワールド」に他なりません。
ウクライナ危機が発生し、ロシアへの経済制裁が発動されたため、アメリカのロッキード社やボーイング社はロシア製のRD180ロケットエンジンが調達できなくなると真っ青になっています。
なぜなら米軍の偵察機や通信衛星には、このロシア製のエンジンが搭載されているからです。
と同時に、NATOはロシアを念頭にウクライナ国内にミサイル配備を進めています。
要は、「軍事費の透明性」など、「建て前」の議論に過ぎないのです。
今、認識すべきはアメリカの信用が中東湾岸地域に限らず世界的に凋落傾向にあることです。
NATOの影響力もしかり。
こうした「新たな現実」を見据えた上で、中国やロシアの暴走を封じるには、冷戦思考に舞い戻るのではなく、外交通商戦略の進化を通じて、アメリアも中国も巻き込んだ運命共同体を構築する方が得策だと言わざるを得ないのです。