ウクライナでチェルノブイリ原発事故の今を学ぶ
先月、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの旧ソ連邦3カ国を訪問しました。
ロシアについては報告しましたので、今回はウクライナについて紹介したいと思います。
クリニチ前駐日大使の提案もあり、キエフ訪問は「ウクライナ外交アカデミー」での日本の政治、経済、外交問題についての講演からスタートしました。
(外交アカデミーでの講演)
ウクライナの将来を担う若い外交官や研究者らとじっくり議論することができ、彼らの日本、アジアに寄せる関心の高さに驚かされたものです。
アベノミクスや日銀の金融政策から始まり、日中、日ロ関係の今後の見通しに至るまで、質問や議論が百出。
あっという間の2時間でした。
(右:外交アカデミーのクリニチ学長、左:坂田駐ウクライナ日本大使)
その後はキエフ州のプリシャジュニュク知事や国立放射線衛生学・免疫学研究所のブズノフ医師、放射線医学研究センターのステパノバ医師らとチェルノブイリ原発事故がもたらした健康被害や国際的な支援体制について意見交換を重ねました。
(キエフ州知事との懇談)
キエフ州知事からは「チェルノブイリでは依然として新たな石棺を建設中」との説明が。
つまり、原子炉内には200トンの燃料が残っているため、それが外に漏れないようにするための石棺を完成させ、その後に取り出し作業に着手する計画だと言います。
こうした石棺の建設にはドイツ、イタリア、アメリカの企業が投資を行っているそうです。
チェルノブイリの原発事故からすでに27年が経とうとしているにも係わらず、克服すべき課題はいまだに山積み状態といっても過言ではありません。
汚染された地域の農業を再生させるため、これまでに130か国が協力しています。
(放射線医学研究センターのステパーノヴァ医師と)
昨年、農業投資関連会社が設立され、農業州の特徴を活かした穀物、野菜、砂糖などの生産、加工、保存、輸出が本格化しているようです。
30年近い弛まぬ努力の結果、ようやく状況が落ち着いてきたところのようでした。
しかし、子供たちの健康問題はまだまだ深刻で、2001年にはイスラエルと、2008年、2010年にはアメリカとも合同調査を実施。
事故後5年経って、子供たちの甲状腺がんが急増し、事故後10年過ぎてから異常が明らかになるケースも報告されているとのこと。
(コロステン市治療診察委員会にて)
要は、被爆後の潜伏期間が非常に長いわけです。
そのため、現在でも全ての子供たちを対象にした定期健診と追跡調査が行われています。
わが国にとっても大いに参考にすべき事例だと思われます。