参議院選挙後の課題:デトロイト市の破綻に見る教訓
ルース駐日アメリカ大使の言葉を借りれば、「カムバックボーイ(安倍総理)の大勝利」に終わった参議院選挙でした。
「ねじれ国会」が表面的には解消されたわけです。
とはいえ国会議員の内面には「ねじれ」よりも深刻な「ねたみ」も見受けられ、安倍総理の今後の手腕が問われることになります。
早速に対応を迫られるのがTPP交渉でしょう。
自由貿易の大原則を掲げるアメリカですが、その結果、財政破綻に陥り、先週「チャプター9」を申請したのがデトロイト市。
かつて自動車を中心とした製造業の拠点として繁栄を謳歌し、全米第4位の中核都市だったのがウソのようです。
(GM本社ビルと空家)
実は、NAFTA、GATT、CAFTAなど一連の自由貿易協定を進めたことが災いし、人件費や土地代の安い海外に工場がほとんど流出してしまいました。
人口は200万から70万人に減少。
市内の30%は無人地帯というよりは無法地帯になっています。
3万3500軒を超える空き家と9万件を超す空き地が無残な姿を晒すばかり。
100ドルの看板を掲げる売家もあるほど。
街灯の半分は銅線泥棒にあい、明りが点かないまま。
(放棄されたデトロイト中央駅)
警察官も給料遅配が続き、勤務時間は昼間のみというありさま。
強盗事件は2011年には対前年比で79%も急増。
窮余の策としてオバマ政権は公共サービスの80%カットを提唱。
その一方で軍隊を導入し、治安対策を強化するといいます。
これが1970年代までアメリカの富を象徴してきたデトロイト市の今の姿です。
民主主義と市場経済を世界標準として押し進めてきたはずのアメリカ。
スナイダー州知事によれば、「デトロイト市が破綻すれば、ミシガン州も同じ運命を避けられない」とのこと。
理想の表看板と目の前に広がる現実は無残なほど乖離しています。
その実態を直視し、同じ轍を踏まないようにするためにも、アメリカが進めるTPP交渉には安易に追随すべきではありません。