中国との関係改善に舵を切ったベトナム
現在、ブルネイで開催中のASEAN外相会議。
岸田外相は中国の王毅外相の目前を目線も言葉も交わすことなく通り過ぎました。
ぎくしゃくしている日中関係を改善する糸口にするため、「偶然の会談」が演出されるのではないか、と期待しましたが、見事に裏切られました。
互いにメンツに拘っていては問題の解決は遠のくばかりなのに。
日中関係に修復の兆しが見えない中、同じく中国との間で領有権を巡って対立しているベトナムの動きが気になります。
というのも、このたびチュオン・タン・サン大統領が初の中国訪問を敢行し、トンキン湾の海底資源を共同開発する合意文書の延長にサインしたからです。
この結果、ベトナムと中国は2016年まで協力して石油と天然ガスの開発にあたることに。
波風の立っている南シナ海でベトナムの国営企業ペトロ・ベトナムと中国海洋石油総公司(CNOOC)が共同プロジェクトの延長に合意したのです。
しかも、この合意を受けるかのように、ベトナムと中国の海軍が合同警備活動を始めたといいます。
ベトナムも中国も表向きは対立関係を装っていますが、水面下では資源開発という実利を追求すべく、しっかりと手を握ったと思われます。
実は、両国はトンキン湾の資源開発以外にも「戦略的互恵関係の強化」と称して、文化、農業、金融、鉄道、国境警備など10件の協力に合意しました。
日本は情報収集の面でも、水面下の交渉の面でも、ベトナム、中国に遅れをとっているようです。
安倍総理のベトナム訪問以来、ベトナムからは官民の代表団が頻繁に来日しています。
しかし、彼らの期待や要望に日本は十分応えていません。
これではせっかくの「トップ・セールス外交」が泣くというもの。
かつて日本が誇った「官民合同の海外事業展開」を早急に復活、進化させねばなりません。