2012年は「ディストピア」に突入か
毎年、1月末から2月初めにかけて世界の政治、経済の指導者がスイスのリゾート地ダボスに集まる。
この会議に出席すれば、その年の重要な方向性がわかる、とまでいわれる通称「ダボス会議」である。
国際政治上の裏交渉やビジネス上のトップ交渉には最適の場となっている。
残念ながら、わが国からの参加者は毎回影が薄い。
こうした貴重な情報交換や根回しの機会を活かせないのは、実にモッタイナイ話である。
野田総理は関心を示していたが、国会対応を優先せざるを得ないとのことで、参加を見送ることに。
世界との係わりなしに生き残れない日本の現状を思えば、総理や外相による重要な国際会議の出席は優先的に認めるべきではないのか。
東大が9月入学に舵を切ったのと同じように、わが国の政界も国際化を目指すべきである。
世界のトップリーダーを集めるダボス会議を主催する「世界経済フォーラム」が「グローバルリスク報告書2012年度版」を公表した。
目を引くのは「ディストピア(暗黒郷)」というキーワードだ。
「ユートピア(理想郷)」の反対語に他ならない。
将来に希望を抱くことのできない若者の蔓延、莫大な負債を抱える国家に依存する退職者の増加、貧富の格差の拡大という世界的な傾向が、グローバル化した経済やオンライン化した社会の進歩や恩恵を破壊しはじめている。
けれども日本はじめ多くの先進国ではこうした問題に対処できるセーフガードを失っていると警鐘をならしている。
日本にとって耳の痛い指摘が多いが、的を得た内容だけに耳を傾けざるを得ない。
こうした問題意識を共有し、世界の指導者たちが解決に向けて未来志向の議論を戦わす場がダボスである。
中国では「夏のダボス会議」を主催している。
その点でも日本の内向き志向が気になる。